〜リスクアセスメント対象物質の取り扱いがある場合、作業環境測定士による濃度測定が必要ですか〜
現在は自律的化学物質管理が始まった一方で従来からの特別規則(特別則)も依然として有効です。
ですので従来から特別則の規制を受ける化学物質のうち作業環境測定が義務付けられているものについては引き続き作業環境測定が必要です。
特別則規制物質以外のリスクアセスメント対象物については、現時点では取り扱いがあるからといって作業環境測定の義務はありません。しかし法改正によって令和8年10月以降は事情が違ってきます。
今回は化学物質のうちリスクアセスメント対象物質と作業環境測定対象物の関係という観点から両者の違いを説明します。
最後までお付き合いください。
※自社で取り扱う化学物質がリスクアセスメント対象物に該当するかの判断法に関する弊所ブログをまだお読みでない方はこちら。
特別則規制化学物質とリスクアセスメント対象物の関係
実は現在は、リスクアセスメント結果に基づき事業者自らが化学物質暴露予防策を講じる新たな管理体制と、有機溶剤中毒予防規則や特定化学物質障害予防規則といった特別則による従来からの管理体制が併存している状況にあります。
厚労省は10年程度を目処に状況を見ながら特別則を廃止するというスタンスです。逆に言えば10年程度は特別規則による化学物質規制も継続されることを意味します。
基本的には職場の化学物質のうち特別規則の規制を受ける化学物質はリスクアセスメント対象物でもあります。つまり特別則規制物質はリスクアセスメント対象物に包含されています。
このことを踏まえ、次の章以降で特別則規制物質とそれ以外のリスクアセスメント対象物ぞれぞれが作業環境測定実施義務とどんな関係があるのかを見ていきます。
令和8年9月30日までの扱い
現在、リスクアセスメント対象物を扱う場合、どのような対応が必要なのでしょうか。
まず、特別則による規制物質から見ていきます。
特別則規制物質は法令の定める措置が適切に実施されていることを確認することによりリスクアセスメントを実施したものとされます。
そして、特別則で作業環境測定の実施が義務付けられているものについては、作業環境測定の実施も必要な措置の中に含まれます。
一方、特別則規制物質以外のリスクアセスメント対象物に関しては、リスクアセスメント結果に基づき事業者自らが選択した方法によりばく露防止対策を講じる必要があります。また、リスクアセスメント対象物の中でも国によって濃度基準値が設定されたものについては、労働者への暴露を濃度基準値以下とすることが求められています。
リスクアセスメントの方法はCREATE-SIMPLEやECETOC-TRAなどを用いる方法やコントロールバンディングなどのツールの利用、第三次産業など特定の業種では業種別マニュアルの活用など様々なものがあります。個人ばく露量の実測(ばく露の程度及び化学物質の有害性の程度を考慮する方法)もリスクアセスメントの方法の一つとして有効です。
また、濃度基準値設定物質については、例えばCREATE-SIMPLEによる推定ばく露量評価の結果、ばく露量が濃度基準値を上回る恐れがある場合、ばく露量が濃度基準値以下であることを確認する必要があります。必ずしもばく露量の実測により確認する必要はありませんが、個人ばく露測定が推奨されています。
令和8年9月30日までは、個人ばく露測定によるリスクアセスメントや確認測定を行うにあたり、実施者に資格は求められていません。
令和8年10月1日以降はリスクアセスメントのための測定や確認測定は作業環境測定となるとともに資格者以外は測定できなくなります
ただ、法令改正によって令和8年10月1日以降は個人ばく露量測定によるリスクアセスメントと確認測定が作業環境測定と位置付けられるとともに、一定の要件を満たした作業環境測定士以外は測定を実施することができなくなります(詳細は、リスクアセスメントのための個人ばく露測定にも令和8年10月以降は資格が必要になります、もご参照ください)
もちろん、従来から作業環境測定士による作業環境測定が義務付けられている特別則規制物質については令和8年10月以降も引き続き作業環境測定が必要です。
まとめ
今回はリスクアセスメント対象物と作業環境測定の関係にスポットを当てて解説しました。
法令改正によって令和8年10月1日以降はリスクアセスメントのための個人ばく露測定や確認測定が作業環境測定に位置付けられることに注意が必要です。