〜小規模事業場が健康診断実施後にすべきことを解説します〜
はじめに
従業員50人以上の事業場においては定期健康診断実施率も高く、医師等の意見を踏まえた上での事後措置含めて制度が浸透しているのではないでしょうか。(事業場の解説はこちら)
では、50人未満の事業場における健康診断は法令上どんな制度になっているのでしょうか。
今回は従業員50人未満の事業場の健康診断について、労働基準監督署への結果報告や事後措置などをどうすれば良いのか解説します。
※本記事では、法令上の「常時使用する労働者数」を「従業員」と表記している箇所があります。また、記事中の安衛法=労働安全衛生法、安衛則=労働安全衛生規則を意味します。
健康診断は就業判定(就業の可否や適正配置)の判断材料として重要です
安衛則44条1項(根拠条文:安衛法66条1項)の規定により、従業員数に関わらず全ての事業場には定期健康診断の実施が義務付けられています。
では、なぜ職場の健康診断が義務付けられているのでしょうか。実は、これは労働衛生コンサルタント(保健衛生区分)口述試験でも頻出の問いです。
企業では健康診断後に医師や保健師による保健指導が実施されているケースも多いので、「生活習慣病の早期発見と治療のため」と受験生も回答してしまいがちです。
確かに健康診断の結果、健康の保持に努める必要がある労働者へ医師又は保健師による保健指導を行うことが安衛法66条の7の1項に努力義務として規定されています。
ただ、この認識だけでは十分ではありません。
事業者には健康診断で異常があると診断された労働者の健康を保持するために必要な措置に関する意見を医師に求める義務があるのです(安衛法66条の4)。
企業に健康診断の実施が義務付けられている最大の理由はここにあります。
抽象的で分かりにくいので、具体例で説明しましょう。熱中症職場を考えます。
暑熱環境においては例えば、糖尿病や高血圧、腎不全などの疾患は熱中症発症に影響を与える恐れがあります。また、暑熱環境での作業によってこれら基礎疾患自体が増悪する可能性も考えられます。
そのような事態を避けるべく、これらの疾患に関連する検査項目に異常があるとき、医師に意見を求め、作業場所の変更や作業時間の短縮など必要に応じた措置を講じることが事業者には義務付けられているのです。
つまり、生活習慣病を主とした疾患を抱える労働者が当該業務に就業可能であるか、あるいは引き続き当該業務への就労が可能かを判断するための判断材料が健康診断なのです。もちろん実際には暑熱環境における作業だけでなく、事業場で行われる全ての作業について医師の意見を求めます。
労働者数50人以上の事業場と50人未満の事業場の法令上の取り扱いの違い
健康診断実施義務、労働基準監督署への結果報告義務、医師の意見を求める必要、の3項目について、事業場の労働者数別に見やすい形で表にまとめました。

労働者数50人未満の事業場の場合、労働基準監督署への健康診断結果報告義務はありませんが(安衛則52条)、50人以上の事業場同様に医師に意見を求めなければいけません(安衛法66条の4)。
※令和7年1月より定期健康診断結果報告書は原則として電子申請が義務付けられていますのでご注意ください。
従業員50人未満の事業場での医師の意見はどうするか
事業者は健康診断実施後3ヶ月以内に、異常所見があると診断された労働者の健康を保持するために必要な措置について医師又は歯科医師の意見を聴かなければなりません(安衛法51条の2、安衛法66条の4)。
これは常時使用する労働者数にかかわらず課せられた義務です。
労働者数50人以上の事業場には産業医の選任義務があります。ですのでその場合、事業者は当該事業場の業務内容や環境にも精通している産業医に意見を求めるのが一般的かと思います。実際、私も産業医に選任されている事業場では意見を述べています。
では、産業医選任義務のない労働者数50人未満の事業場ではどうすれば良いのでしょうか。
まずは、地域産業保健センター(地さんぽ)に相談してみてください。
地域産業保健センターは、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する公的機関です。労働者数50人未満の事業場を対象に長時間労働者への医師の面接などの事業を提供しています。概ね労働基準監督署の管轄地域ごとに設置されていますので、貴社のお近くの地さんぽをご利用可能です。
公的機関ですので地さんぽで対応可能な場合は、回数制限などあるものの料金は無料です。(地域産業保健センターの詳細はこちら)
ただ、人員や予算などの関係で対応が難しいケースもあるようです。
その場合は当事務所にご相談ください。産業医選任義務のない小規模事業場でも対応させていただきます。
貴社の成長に伴い、従業員50人以上になれば産業医として、従業員201人以上になれば2人目の衛生管理者として、当事務所が貴社の衛生委員会をサポートさせていただくことが可能です。
労働者数50人未満の事業場が規模拡大とともに必要となる労働衛生管理体制
・労働者数50人以上となった時点で、産業医と衛生管理者を1人ずつ選任する必要があります。
・労働者数201人以上となった時点で衛生管理者を2人選任する必要があります。
※衛生管理者を外部委託できるケースについてはこちらをご参照ください。
※健康診断実施後の流れについて参照条文付きのフローチャートでまとめたリーフレット(名古屋市医師会HP)がありますのでご参照ください。
まとめ
従業員50人未満の事業場も健康診断の実施と医師の意見を踏まえた上での事後措置実施が求められています。
産業医がいない事業場は、まずは地さんぽに医師の意見を求めることができるか相談してみるのが良いかと思います。
地さんぽの利用が難しい場合、問い合わせフォームより当事務所にご相談ください。