福井労働衛生コンサルタント・産業医事務所


化学物質管理者と化学物質管理専門家の違い


〜必要とする事業場・職務・資格要件を比較し化学物質管理者の理解を深めます〜

はじめに

自律的な化学物質管理において化学物質管理者は事業場のリスクアセスメント対象物管理全般に中心的な役割を果たします。

しかし、同じく自律的な化学物質管理において登場した化学物質管理専門家と名称が似ているため混同されている場合もあるかもしれません。

一般的に「〜の専門家」というと教育・研究機関で研究を行っているなど、その分野に明るい有識者、という意味で使われることが多く、定義は不明確で必ずしも特定の業務を行う者を意味しません。

しかし、化学物質管理専門家は法令で定義された一定の業務経験を有する資格者で、特定の職務を担う専門家です。どういった専門家なのでしょうか。

今回は化学物質管理専門家と比較しながら化学物質管理者の解説を行います。

※化学物質管理専門家と比較することで化学物質管理者の大まかな理解を深めることを意図した説明ですので、国家試験対策や実務で細部の確認が必要な場合は厚労省リーフレットや法令など別途資料も必ずご確認ください。

必要な局面:化学物質管理者はリスクアセスメント対象物を製造、取り扱う全ての事業場で必要

<化学物質管理者>

化学物質管理者はリスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、又は譲渡提供する全ての事業場で選任する必要があります(安衛則12条の5)。

業種や事業場の規模に関係なく選任が必要です。

<化学物質管理専門家>

一方、化学物質管理専門家が必要な事業場は表の通り2つのタイプの事業場です。

化学物質管理者と化学物質管理専門家比較表-必要とする事業場

つまり、

①化学物質による労働災害が発生し、又はそのおそれがあり、化学物質管理が適切に行われていない疑いがあり労働基準監督署長から化学物質管理の状況について改善の指示を受けた事業場(安衛則34条の2の10)。

又は、

②化学物質管理が一定の水準以上であり、特別規則(特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、粉じん障害防止規則)の一部の個別規制適用除外を受けようとする事業場(有機則4条の2、特化則2条の3など個別の特別規則で規定)。

です。

簡単に言うならば、化学物質管理に大きな問題がある可能性があって労働基準監督署長から改善の指示を受けた事業場か、あるいは、自律的な化学物質管理が良好に行われているため特別規則の一部適用除外を受けられる事業場ということになります。

化学物質管理者に比べ、化学物質管理専門家が必要となるのはかなり特殊な状況です。

「事業場」についての解説はこちらをご参照ください。

事業場内で取り扱う化学物質がリスクアセスメント対象物に該当するかの判断法についての解説をまだお読みでない方はこちら。

職務:化学物質管理者は事業場のリスクアセスメント対象物の管理全般を担います

化学物質管理者と化学物質管理専門家の職務の違いを表にしました。

より具体的にあげると以下のようになります。

化学物質管理者と化学物質管理専門家比較表-職務

<化学物質管理者(安衛則12条の5①、厚労省リーフレット)>

・ラベル・SDS等の確認

・リスクアセスメントの実施管理

・リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理

・化学物質の自律的管理に関する各種記録の作成・保存

・化学物質の自律的管理に関する労働者への周知、教育

・ラベル・SDSの作成(リスクアセスメント対象物製造事業場)

・リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応

<化学物質管理専門家>

①労働基準監督署長より改善指示を受けた事業場に対し、以下の内容の確認・助言を行う(安衛則34条の2の10②)

 ・リスクアセスメントの実施状況

 ・リスクアセスメントの結果に基づく必要な措置の実施状況

 ・作業環境測定又は個人ばく露測定の実施状況

 ・特別規則に規定するばく露防止措置の実施状況

 ・事業場内の化学物質の管理、容器への表示、労働者への周知の状況

 ・化学物質等に係る教育の実施状況

※この場合の化学物質管理専門家は客観性を担保するため事業場外部の者が望ましいとされています。

②特別規則適用除外を受けようとする事業場は、事業場内に専属の化学物質管理専門家を配置し一定の事項を管理させた上、事業場外部の化学物質管理専門家の評価を受け、必要な措置が適切に講じられていると認められる必要があります。

つまり、特別規則適用除外を受けるためには2人の化学物質管理専門家の関与が必要です。2人の専門家の職務はそれぞれ以下の通りです。

<事業場内の専属の化学物質管理専門家が管理すること(有機則4条の2、特化則2条の3など)>

 ・リスクアセスメントの実施

 ・リスクアセスメント結果に基づく措置その他労働者の健康障害を予防するために必要な措置の内容及び実施

<事業場外部の化学物質管理専門家が評価すること(安衛則34条の2の8第三、四号)>

 ・リスクアセスメントの結果

 ・リスクアセスメントの結果に基づき事業者が講じる危険又は健康障害を防止するための措置の内容

資格:化学物質管理専門家要件を満たす者は製造事業場に必要な化学物質管理者講習の代用が可能

化学物質管理者については、リスクアセスメント対象物を製造する事業場では一定の資格要件が設定されています。

一方、それ以外の事業場では資格などは必要ありません(取り扱い事業場向けの講習等の受講が推奨されています)。

資格要求の違いから前者を「製造事業場」、後者を「取り扱い事業場」などと区別して呼ばれることがあります。

化学物質管理者と化学物質管理専門家それぞれの資格要件を表にまとめました。

令和4年9月7日基発0907第1号より改変

以下でより詳しく見て行きましょう。

化学物質管理者と化学物質管理専門家の比較表-資格要件

<化学物質管理者(製造事業場)に必要な資格要件>

 ・専門講習修了者

 ・労働衛生コンサルタント(労働衛生工学区分)登録を受けた者

 ・化学物質管理専門家の要件を満たす者

前述のように化学物質管理者はリスクアセスメント対象物を有する全ての事業場で選任が必要です。

にもかかわらず難関国家資格などを資格要件に設定すれば誰も該当者がなく化学物質管理者を選任できない事業場が続出してしまいます。

とはいえ、化学物質のリスクアセスメントにはある程度の知識が必要です。よって、製造事業場はもちろんそれ以外の事業場にも講習の受講が推奨されているわけです。

ここでは、化学物質管理専門家は化学物質管理者の要件も満たしていることを覚えておいてください。

<化学物質管理専門家に必要な資格要件>

 ・労働衛生コンサルタント(労働衛生工学区分)で5年以上化学物質管理又は粉じん管理に係る業務に従事した経験した者

 ・衛生工学衛生管理者として8年以上の実務経験を有する者

 ・作業環境測定士として6年以上の実務経験を有し、所定の講習を修了した者

 ・労働安全コンサルタント(化学区分)で5年以上化学物質又は粉じんに係る業務に従事した者

 ・日本労働安全コンサルタント会からCIH(Certified Industrial Hyginene Consultant)の称号使用を許可されている者

 ・日本作業環境測定協会認定オキュペイショナルハイジニスト又は国際オキュペイショナルハイジニスト協会の国別認証を受けている海外のオキュペイショナルハイジニスト若しくはインダストリアルハイジニストの資格を有する者

 ・日本作業環境測定協会認定の作業環境測定インストラクター

 ・衛生管理士に選任された者で、5年以上労働災害防止団体で5年以上業務経験を有する者

 ・産業医大認定ハイジニスト

専門家と言われるだけあって、化学物質管理者に比べると要求される専門性が高いことが分かります。

ゆえに先ほど覚えていただいたように、化学物質管理専門家は化学物質管理者の資格要件の一つになっているのです。

まとめ

最後にこれまで見てきた全ての項目を掲載した表を載せておきます。

化学物質管理者と化学物質管理専門家の比較表

今回は化学物質管理専門家と比較することで化学物質管理者について解説を行いました。

名称は似ていますが、専門性の高さが異なるため、これらを必要とする事業場や期待される職務、資格要件は大きく異なります。

化学物質管理者選任の必要な事業場は適切に選任を行い、化学物質管理を行いましょう。

とはいえ自律的な化学物質管理は様々な法令が絡むため理解が難しいのも事実です。

弊所では、化学物質の自律的管理についての出張セミナーの提供も可能です。

制度の概要やリスクアセスメント対象物への該当の有無の判断法といった初歩的な内容に関するセミナーを開催可能です。今更聞けない自律的化学物質管理の初歩的知識が身につくセミナーを貴社のご希望の日時に貴社に出向いて展開させていただきます。

ご質問や開催ご希望の場合、問い合わせフォームよりご連絡ください。


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