-サービス業の企業の職場にも熱中症対策が求められています-
更新日:2025年9月7日
まだまだ暑い日が続きますね。熱中症対策も欠かせません。
熱中症は屋内でも発生しうる、ということは広く認知され始めてきたように思います。
では、職場の熱中症においてはどうでしょうか。
厚労省の統計によると例年の死傷者数のうち概ね4割程度を建設業と製造業が占めています。つまり、職場の熱中症も屋内で多数発生していることがわかります。
そして企業の熱中症は第三次産業の職場においても発生します。
一定の職場における熱中症対策が令和7年6月より義務化されましたが
業種によらず、一定の要件を満たす職場における熱中症対策の義務化が始まりました。
ただ、内容的には熱中症を発症した労働者の早期発見と迅速な救急搬送を確実に行うことを主眼としたもので、法令を遵守するだけでは熱中症の発症そのものの予防は不十分です。
熱中症の発症予防には暑熱環境の改善や作業時間短縮、服装の改善、基礎疾患の把握とこれに基づく個別対応、各種教育などが必要となります。
しかしながら、個々の作業環境や作業方法などは業種によって全く異なり、更には同一業種であっても事業場によっても大きく異なることも多々あります。
弊所のお客様でも同一施設内であってもフロアによって暑熱環境や作業の態様が全く異なる、というケースは経験するところです。
熱中症予防に必要な対策は事業場ごとに異なります
ゆえに、個々の事業場に必要な対策を一律に列挙するのが難しいのです。
もちろん、暑熱順化促進や衛生委員会メンバーによる巡回(水分・塩分摂取の促し含む)など、どの事業場にも共通する対策はあるものの、熱曝露後の発症リスクを抑えるものが中心になります。これらが大切であるのは間違いないのですが、暑熱環境の改善や作業行程・衣服の見直しなど作業環境管理、作業管理の観点からの対策が非常に重要です。
例えば、ミストシャワーは熱中症対策として街中で見かけることも多くなりました。噴霧した水が気化する際に熱を奪う作用を利用して温度を下げる装置で、屋外作業でかつ、その場であまり人の移動を伴わない場合には非常に有用です。
しかし例えば浴室内など湿度が高い環境においては効果がそれほど期待できません。介護施設内の浴室内の入浴介助などです。また、飲食店では衛生上の課題もあるかと思います。
事業場によってはスポットクーラーが有効なケースもありますが、浴室内などでは使用が難しいでしょう。また、排熱ダクトを屋外に設置できない場合にはダクト周辺の暑さが増すことになり、新たな暑熱環境が生まれます。
このように、ある事業場では非常に有効な対策が別の事業場では有効ではない、あるいは利用できない、ということが起こりやすい労働衛生課題の一つが熱中症対策です。
まずはWBGTの把握から
前述の介護施設の浴室内では、衣服を着用していない利用者の方のすぐ側で、着衣の上から前掛けなどを着た職員が労働する必要があることも対策を難しくしている要因です。利用者の方が寒さを感じないよう配慮する必要もあるからです。
ですので、「この対策が有効」というものを一律に論じることはできません。では、どうするのか。
まずは熱中症リスクのある作業場を洗い出し、WBGTを実測してみるのが良いでしょう。
WBGT値は算出の際に衣服の種類による補正がなされることに加え、暑熱順化の有無と作業強度に応じた基準値が選定されるため、WBGT値に基づく検討は実践的です(WBGTについては、熱中症対策で用いられる暑さ指数の基準値をご存知ですかをご参照ください。)
WBGT値算出と基準値との比較の過程で暑熱環境や衣服、作業強度の影響を意識することが可能です。
もちろん、暑熱環境の改善は前述のように必ずしも簡単には行きませんが、事業場によっては衣服の改善や作業行程・作業時間の改善で予防できないか検討するきっかけになるかもしれません。
また、衣服や作業に改善の余地がないのであれば暑熱環境の改善に取り組むしかありませんが、少なくともそのことを認識することができます。
WBGT値を把握したら
個々の熱中症職場に必要な対策を一律に論じることはできませんが、例えば冷却や水分補給といった個々の対策を行う上でのポイントを示すことは可能です。
一個一個の対策テーマを考えることで自社の対応の参考になる部分を吸収いただきたいと思います。
別稿でまとめますので以下のリンクをご利用ください(現在拡充中。)
まとめ
第三次産業においても熱中症対策の必要性は年々増しています。
暑熱環境の状況は業種・事業場ごとに全く異なるため一律に必要な対策を論じることは困難です。
まずはWBGT値を実測することが課題の認識につながるかと思います。課題が認識できれば一つ一つ改善策を検討することができるでしょう。
職場の労働衛生課題は事業場が自らの責任で行うことが求められています。しかし、中小企業においては労働衛生の専門家が不在であることが多く、対策に難渋することもあるかと思われます。
そんな時は、労働衛生コンサルタントに相談してみるのも良いでしょう。
弊所は非製造業企業にも身近な存在である産業医であると同時に労働衛生工学の専門家として第三次産業職場の熱中症対策・化学物質対策のサポートに取り組んでいます。
飲食店や福祉・介護施設の熱中症対策のサポートは弊所にお任せください。
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