-WBGTの基準値は作業強度と暑熱順化の有無、気流の有無に応じて複数存在します-
背景
ここ数年、職場の熱中症による死亡者が30人を下回ることなく推移しています。
厚労省も一定の条件を満たす事業場の熱中症対策を義務化するなど対応を強化しています(事業場とは?)。
厚労省が推奨する熱中症対策の一つにWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)の実測が含まれており、聞いたことのある方も多いかもしれません。
熱中症対策が義務化される事業場の条件にもWBGTが記載されていることもあり、WBGTの理解と職場での実測は欠かせません。
ここでは、まずは熱中症の理解を深め、次にWBGTをどのように活用するのか順を追ってご紹介したいと思います。
熱中症とは
熱中症とは高温・多湿な環境下において、体内の水分及び塩分バランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称、と定義されます。
つまり、熱中症発症リスクのある環境に置かれると必ず発症するわけではなく、高温多湿な環境下で熱ストレスに人体が代償しきれなくなった場合に発症します。
職場環境の熱中症リスクを評価することができれば熱中症予防対策を適切に行うことにつながります。
そこで登場するのがWBGTです。
WBGT値
WBGTは、暑熱環境下での熱ストレスの評価を行う暑さ指数です。
算定式は、
①屋内の場合及び屋外で太陽照射がない場合: 0.7×自然湿球温度+ 0.3×黒球温度
②屋外で太陽照射がある場合: 0.7×自然湿球温度+ 0.2×黒球温度+ 0.1×乾球温度
と表されます。
※自然湿球温度は湿度の影響、黒球温度は輻射熱、乾球温度は気温を反映します。
WBGT値の補正
前述の算定式から計算したWBGTは必ずしもそのままで使用できるものではありません。
表1 衣類の組み合わせによりWBGT値に加えるべき補正値(厚労省 職場における熱中症予防対策マニュアルより引用)

WBGT基準値
補正したWBGT値は、身体作業強度、暑熱順化及び気流の有無に応じて表2のような基準値が提示されています。
表2 身体作業強度等に応じたWBGT基準値(厚労省 職場における熱中症予防対策マニュアルより引用)

WBGTを活用するメリット
では、実測したWBGTはどう活用するのでしょうか。
WBGT値を把握しリスクがあると判断された場合は、ミストシャワーや冷房設備、熱源と作業者の間に遮熱板を設置するなどの作業環境の改善につながるケースがあるかと思います。
その場合、日による変動もあるものの、WBGT値を再計測することで対策の効果をある程度評価することが可能です。
また、実測したWBGT値と基準値を比較することで、表3のように適切な休憩時間設定の目安とすることが可能です。
表3 熱中症予防対策のない場合の休憩時間の目安(厚労省 働く人のすぐ使える熱中症ガイドより引用)

まとめ
WBGT値は実測値を補正し、作業強度等に応じた基準値を適用することで熱ストレスの評価を行います。
WBGTを活用することで熱中症リスク評価のほか、作業環境管理や作業管理にも役立てることが可能です。
弊所は第三次産業の熱中症対策や化学物質の自律的管理対策のサポートに注力しています。
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